DVD「華氏911」

カンヌ映画祭パルムドール受賞が非常に意義深いと感じる本作は世界一のドキュメンタリー作家となったマイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」に続く第2作目です。
徹底的にブッシュ元大統領を批判する姿勢には正直驚きます。というのもあれだけの動きをするとやはり妨害が少なからずあると思うのです。しかしムーア監督は作り上げました。実に素晴らしい、です。
アメリカで起こったテロ事件、911を発端にブッシュの歴史や背景を紐解きアフガンやイラク戦争に結びつける論旨は実に見事。いままでなんとなくわかっていたけど、スピークアウトできなかったことが、思いっきり語られていきます。

同業者の目で見ると、やはり編集の巧みさが目立ちます。それからマイケル・ムーア監督が自らジャーナリストとして突撃している様は本人のナレーションも意味合いがしっかりしていて納得。時折カットバックで笑わせてくれるところもタイミングが小気味いいです。
さらに「ドキュメンタリー」というジャンルをここまで世界中に認知させた功績は素晴らしいです。「ドキュメンタリーは暗い」というイメージばかり植えつける日本メディアと明らかにスタンスが違います。政治や戦争関連のドキュメンタリーをエンターテイメントに昇華するやり口は大いに賛成。ただ、字幕を追っていると文字量が多いので辛いかも。。。

映画「This is it」

マイケル・ジャクソンが他界してまだ日が浅いというのに、直前で白紙と化したロンドン公演の舞台裏映像を中心に構成したマイケルのドキュメンタリー映画が完成したことは正直驚きでした。

「そこまで商魂たくましくやらなくたって・・・」

これが映画を見る前の素直な気持ち、でした。マイケルは本当に素晴らしいアーティストだし、僕らの青春そのもの。マイケルが何かをすればそこには必ずビジネスがついて回るのはわかっているけれど、「死して尚」と思うとやや辛い気持ちになるものです。

ところが、

この映画、素晴らしかったのです。50歳のマイケル・ジャクソン。マイケルに憧れてダンサーになり、その彼と同じステージに立つことになった人たち。周りのスタッフたちは皆、マイケルが憧れでありマイケルのためならなんでもやる!と明言する。しかもそのセリフはマイケルがまだ生きているときに撮影された映像ばかり。
もともと、この映像は個人的な記録映像として撮影されていたに過ぎないのです。だからこそ、今となってはその映像に重みがあります。「その時そこで起きていることを記録」していたに過ぎない映像が、マイケル他界により思いもよらない「価値」を生み出してしまったわけです。

私はこの映画をみて、商魂たくましく作った映画、と思った自分を恥じました。
映画は明らかにマイケルに対しての愛が充満していて、彼の素晴らしさの一端が見て取れます。純粋にその気持ちをシェアしたかったのではないかと思えたのです。
監督はケニー・オルテガ。コンサート・ツアーのプロデューサーです。もし私が彼の立場だったら辛くてこんな映像編集できません。編集点を打つことは不可能だと思います。しかし彼はこの短い間にそれを行ったわけで(これは完全に推測ですが)彼の悲しみはいかばかりか、と思うのです。

通常なら映画としては決して十分とはいえない映像も、ここでは十分に価値を持っています。「舞台裏」という側面から見てもなかなか面白いのですが、それよりなにより「口先」とか「小手先」ではない、目には見えない力、を感じます。

そんなマイケルのすごさを世界中の人々に伝えないわけにはいかない、と監督は感じたのではないでしょうか。もし皆さんにも「誰かに何かを伝える」という機会があるのでしたら尚更見ていただきたいと思います。「表現者」としてのマイケルは本当に素晴らしい人であったのだと知ることが出来ます。

http://www.sonypictures.jp/movies/michaeljacksonthisisit/

映画『カムイ外伝』

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『カムイ外伝』を見てきました。
監督の崔洋一さんが連載している中日新聞のコラムで
自画自賛されていた(当然ですが)のを読んで
見に行ってみようと思いました。

実はこの時期、何故か時代劇が目白押しです。
『カムイ外伝』
『TAJOMARU』
『火天の城』
『バラード』
何故なのかはわかりませんが、きっと何か裏があるのでしょうね。
これだけ同じ時期に揃うとはやや異常です。

映画のほうは、
松山ケンイチ、佐藤浩一、伊藤英明、土屋アンナの演技は素晴らしいかったです。
中でも土屋アンナの存在は光っています。
しかし残念ながら内容はもうひとつ。
役者の演技だけを見るなら面白い、のですが。

私は基本的に映画のことは褒めたい、と思っています。
しかし今回はいけません。
時間と金の所為でやっつけたな、という印象なのです。
脚本のクドカンもやっつけな感じ。
アクション映画なのに2時間を長く感じるとは致命傷です。

内容的に一番の問題点は、
CGの質があまりにも低いこと。
鹿、人間、鮫、、、日本映画のCGクオリティーはあんなに低いのか、と
唖然とします。
カラコレもいじり過ぎで、海と空の青が見ていて気持ち悪いです。
崔監督はなんとも感じなかったのでしょうか。

高速度カメラ・ファントムを使ったスローモーションは美しかったし、
役者さんの演技は素晴らしかったと思います。
でもそれ以外の粗が目立ちすぎて興ざめです。

原作のカムイ外伝には思いいれもあるだけに
やりきれない思いが残る作品となりました。

絶対にもっと面白い映画にできたはず!と感じずにはいられません。

同じ劇場で見ていたお客さんが
「TAJOMARUにしとけばよかったね。」
と言っていたことが全てを物語っています。

映画「サブウェイ123 激突」

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本日から公開の映画「サブウェイ123 激突」を早速見てきました。
この映画は70年代に制作された「サブウェイパニック」のリメイク版だそうですが、
現代ニューヨークをよく描いていることから細かなストーリーなどは全く新しい映画として
鑑賞できるのではないかと思います。
 
映画はトニー・スコット監督のメガホンです。
トニー・スコットといえば我々世代にとってはまず「トップ・ガン」でしょう。
あの一世を風靡したスタイリッシュ映像は一時代を創り上げました。
今回の作品でも、
トニーはハリウッドの中でも映像センスはピカイチの監督なのだとあらためて認識できます。
ロングレンズの多用やスティル・モーションを旨く利用した演出はCGなどではなく、
『撮影』と『編集』の面白さを実感させてくれるものでした。
 
とにかくオープニング・タイトルからしてカッコよすぎ。
同じ映像業界の人間としては『真似したくなるセンスのよさ』に溢れています。
 
ディンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタの演技もさることながら、
脇をしめる役者もなかなかの名優ぞろい。
なかでもNY市長役のジェームズ・ガンドルフィーニがいぶし銀です。
 
個人的にはラストの展開はもう少しひねって欲しかったと思いますが、
まぁ、それも好き好きの範疇。
あと、ところどころでピントの甘いカットが出てくるところが気になりました。
あれも演出のうちなのでしょうか??

映画「ハリー・ポッターと謎のプリンス」

※これからお話しする内容は気分が悪くなる内容を含みます。例え気分を害することになっても当方は責任を負いかねます。自己責任でお願いいたします。

いよいよクライマックスが近づいてきたハリー・ポッター・シリーズ。
今回の「ハリー・ポッターと謎のプリンス」でシリーズ第6弾となりました。
夜の部で見てきましたがなかなかの人気ぶりで、ハリー熱が今もって高いことが伺えます。
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さて、
内容のほうはというと、実のところシリーズ中もっとも「陰湿」な雰囲気漂う物語。
早く次を見てスッキリしたい、といった感じです。
上映時間も3時間程あり、ほぼ重々しい雰囲気のまま突っ走ります。
何かロンドンの持つ暗い側面がぶわっと出てしまったような気がしました。

でもこういう内容って女性は結構好きなんじゃないかと思います。
理由はわかりません。
が、以前にもこういうことがありました。

見るもおぞましい死化粧師のドキュメンタリー映画を見に行ったことがあります。
毎日毎日死体と向き合い、死体が腐らないように臓物を取り出し、身体を洗い、
死化粧を施してあげるという男の話です。
もはやゾンビ映画などとは質が根本的に違います。
なにせそこに写っているのは「本物」なのですから。
私は見るつもりは全然なかったのですが、その監督が私の友人の友人だった関係で
見に行くハメになりました。

しかし劇場に入ってビックリ。
席はほぼ満席。
しかもほとんどが若い女性ばかり。
皆真剣な表情で食い入るように見ていたはずです。
上映が終わり監督と話しをしていると、
やはりどこで上映しても若い女性客は異常に多いと言うのです。

理由はわかりません。

映画「ターミネーター4」はマッドマックス(北斗の拳)

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骨太なストーリー展開が期待されたT4。
正直に申し上げると、T3も見ずにT4を見に行って、しかも内心
(ターミネーターシリーズはT2までだろ、やっぱり)
なんて否定気味で望んだわけです。

でも結果的にはそれが良かった。

ストーリーとしてはもちろん、背景も含めてターミネーターの世界であるにも関わらずT4は全くの新シリーズとしての魅力を持っています。「審判の日」をめぐるスカイネットとの全面戦争を描いた話である一方で、新しい軸も用意されています。

本作はひと言で言えば「マッドマックス(北斗の拳)的ターミネーター」。

世界観がまさにマッドマックス。砂漠、荒廃した町、革ジャン、ゴーグル、改造バイク、車、、、。
オーストラリアでロケしたのか、と思ってしまいました。
しかしそれが本作の魅力となっているのは確かです。
ジョン・コナーの父、カイルは言葉の話せない少女スターと一緒に町に潜んでいるのですが、この設定はまさに「北斗の拳」です。バットとリン。
McG監督はどうも日本好きらしく、デビュー作の「チャーリーズエンジェル」ではピチカート・ファイブを挿入歌にしているそうです。AKB48にもご執心らしいので「筋金入り」な感もありますね。
シリーズに対するオマージュも随所に見られて、監督のMcGが如何にシリーズに対して敬意を払っているかがよくわかりました。あと、オマージュついでにいうと「地獄の黙示録」的なシーンもありました。オマージュを込めるのが好きな監督なのかもしれません。

McG監督の演出は素晴らしい、と感じました。
ストーリー、映像、編集どれをとっても「冴え」があります。

シュワルツェネッガーの子供が「シリーズ最高の出来!」と言った話もあるそうです。
本シリーズを愛してやまない人なら間違いなく楽しめる映画だといえるでしょう。

ターミネーター4公式サイト

映画「トランスフォーマー・リベンジ」

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「トランスフォーマー・リベンジ」を見てきました。1作目はブルー・レイで鑑賞済み。その勢いに乗って続編へ。ブルー・レイでは特典映像もすべて見たので米軍がどれだけ協力しているかとか、マイケル・ベイ監督のこだわり、CG技術、アクションなどしっかりと勉強済み。2作目となるとかなりハードルが高いな、と思いつつ拝見しました。

内容は、
相変わらずのど派手なアクションと大掛かりな軍事行動、半端のない火薬量、中東領域で砂まみれ、お姉ちゃんはクビレ重視の栗毛セクシー娘。もちろんCGは恐るべき領域へ。
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今回一番見ごたえがあったのは「森」での格闘シーンでした。やはり自然の中でトランスフォーマーが戦う姿は技術的にかなり苦労をしている感があります。
木の揺らめき、光の反射、水の動き、砂の描写、、、どれもがCGアーティスト泣かせでしょう。

映像には毎回驚かされますが、今回もすごかったです。ただ、1作目の衝撃が2作目では「当たり前」の映像になってしまうため、どうしても2作目は背負う期待が大きすぎるかな、という気も。そのせいか、上映時間は3時間!で、その間これでもかこれでもかとCGアクションの連続。流石に「時間」を感じさせる映画となってしまったのは残念です。

ストーリーは実にシンプルな勧善懲悪ものなので1時間もあれば昇華できそう。それを3時間まで膨らませるわけだからちょっと「間延び感」は否めません。
いえ、それにしてもCGはスゴイです。
あれだけ作りこんだら切りたくないだろうなぁ。気持ちはわかります。

「トランスフォーマー・リベンジ」オフィシャル・ホームページ

映画「グラン・トリノ」

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立て続けに映画批評を書いていると暇人かと思われてしまいそうですが、
まぁまぁ、そんな日もあるさということで、「グラン・トリノ」を見てきました。
本日が最終日。
これはどうしても見たかった映画です。クリント・イーストウッドは年をとるにつれいぶし銀の作品が次々と登場します。淡々と、クールに現代を見つめ、映画だからと言ってそれほど執着して制作しているような力みも一切ない彼の映画は芸術そのもの。で、

内容は、イーストウッド演じるコワルスキーは朝鮮戦争帰還兵で元フォード自動車工。妻を亡くし、一人住まいが始まるその日から話が始まります。老人コワルスキーは子供はいるが疎まれる存在。いつも癇癪をおこす頑固ジジイなのです。その彼はヴィンテージ・カー「グラン・トリノ」を大切にしているのだが、ある日チベット系・モン族の若者がその車を盗もうと家に忍び込みます。
しかしそのことをきっかけにコワルスキーとモン族の青年との交流が始まるのです。。。

なんか、地味なストーリーなので「金を払ってみる映画=エンターテイメント」と考えている人には足が向かない映画かもしれません。
しかしこの力を抜いて見れる映画が、なんと人生経験を豊かにしてくれることでしょうか。まず脚本が素晴らしい。キャスティングも見事。映像も申し分ないです。心にズシリとやってくる映画です。見終わった後、映画の感想を話し合っていたら再び涙がこぼれてきました。そんな映画です。

イーストウッドはこれで俳優業最後だそうですね。
一生心に残る映画だと思います。

映画「スタートレック」最新作は素晴らしい出来

映画「スタートレック」を見てきました。
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http://www.startrekmovie.com/intl/jp/
本作を監督したのはJ.J.エイブラムス。海外ドラマ「LOST」(04〜)、映画『M:I:III』(06)、『クローバーフィールド HAKAISHA』と常に話題作を作り続けている人です。
本作は正直始めはトレッカーにのみ捧げるマニアックな映画になっているかと思いましたが、さにあらず。カーク船長誕生秘話を軸に展開するストーリーは「スタートレックは見たことある・・・」程度の人でも充分に楽しめ、初めての人でもスタートレックの世界に入ることが出来そうです。
私の場合、昔映画で何本か見た程度でしたが、「なるほどぉ」という話も随所にあり、トレッカーの仲間に少しだけ入れたような気になりました。スタートレックの世界観も充分に描かれ、現代地球が抱える問題をSFというステージで表現する精神は貫かれています。個人的には「いつまでたっても白人至上主義」を思い出させる設定がやや時代遅れな印象を受けるものの、そこのところを笑って許すことが出来れば楽しめそう。
スタートレックの起源がわかる本作。

「フレア」の使い方が印象的な映画でした。
あ、それから映画に登場する悪役のボス、名前が「ネロ」といいます。発音を聞いているとなんだかマトリックスの「ネオ」に聞こえるんですね。まぁ、意味はないと思いますが。

天使と悪魔

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映画「天使と悪魔」を鑑賞。
素晴らしいエンターテイメント・ムービーに仕上がっていました。

監督のロン・ハワードは「バックドラフト」や「アポロ13」が有名ですが、個人的には「コクーン」(1985)以来のお付き合い。スピルバーグ一家という印象がどうもぬぐい切れない監督です。ちなみにビジネス、経営界ではグループの士気を高める秀作として「アポロ13」がよく登場します。皆で一致団結してがんばれば、どんな苦難も乗り越えられる、というテーマをドラマチックに描いているからです。
本作のほうはというと、なんとも贅沢に予算を投じて作ったなという印象。その豪華さにハリウッド映画の圧倒的な力を感じます。
宗教が科学を弾圧してきた歴史とその背景、そしてローマ、バチカンというロケーション、そのどちらも非常に興味深く見ることができます。個人的には宗教と科学の対立は以前から気になるテーマのひとつ。近頃は双方が歩み寄る傾向にあるという話も聞いたことがあったので映画でどのように描かれるのか楽しみにしていました。
詳細は見てのお楽しみ、です。

見終わるとローマへ行きたくなること請け合い。

さて、最近の映画鑑賞では観客の反応が以前とは変わってきました。
これまで黙って見る事を美徳としてきた日本人が映画館でしゃべったり、映画に反応する人が増えたのです。その人たちはまるで家でテレビを見るように反応しています。
これ、中には不快に感じる方も多いのではないでしょうか?
でもよくよく考えてみると、これは
アメリカの観客の反応に似てきたといえなくもないです。
アメリカだと客はいちいち反応します。口笛ピー!、オーノー!、イエーィ!それはそれは賑やか。

だから欧米化ですね。

まぁ、もともとは劇場のエンターテイメントなのだから皆で感情を分かち合い、楽しむというのはいいことだと思います。
徐々に楽しみ方も変化しているのかな、と感じますね。不快に思わず一緒に豪快に楽しんで感情をシェアできればもっと映画館に行くのが楽しくなるかもしれません。
逆にそれが嫌な人はホームシアターで静かに楽しむ、ということでしょうか。