「きれいな動画」が会社をダメにする理由──広報担当者が知るべき動画戦略の本質

会社の未来をつくる動画戦略: 広報担当者が制作依頼係から戦略設計者へ進化する実践ガイド

「また、いい感じの動画ができましたね」

制作会社から納品された動画を見ながら、あなたはそう言ったかもしれません。映像は美しく、BGMもおしゃれで、社員のインタビューも丁寧に編集されている。でも、心のどこかでこんな疑問が浮かんでいませんか。「で、これ…何のために作ったんだっけ?」

わたしは先日、『会社の未来をつくる動画戦略』という本を出版しました。この本を書いたきっかけは、多くの企業で「きれいだけど、何も生まない動画」が量産されている現実を目の当たりにしたからです。そして、その責任が広報担当者個人にあるわけではないと、強く感じたからでもあります。

会社の未来をつくる動画戦略: 広報担当者が制作依頼係から戦略設計者へ進化する実践ガイド

あなたは「動画依頼係」になっていませんか?

多くの企業で、動画制作のプロセスはこんな感じです。

社長や上司から「うちも動画やろう」と言われる。慌てて制作会社に連絡して、ざっくりとした要望を伝える。出てきた企画書に「いいですね」と返事をして、撮影日を調整する。納品された動画をチェックして、YouTubeにアップする。再生数を見て、なんとなく「まあ、こんなもんか」と思う。

これ、動画制作じゃなくて、ただの「制作会社への依頼業務」です。

わたしがこの本で最も伝えたかったのは、広報担当者の仕事は「動画を作ること」ではなく、「動画で会社の未来を設計すること」だということです。この視点が抜け落ちているから、時間と予算をかけても、会社の信頼や採用力や売上につながらない動画ばかりが生まれてしまうんです。

そして、これはあなたの能力不足ではありません。そもそも、誰も「動画戦略の設計方法」なんて教えてくれなかったんですから。

この本が「撮影技術」を一切教えない理由

「動画の本なのに、撮影テクニックも編集技術も載ってないんですか?」

そう聞かれることがあります。はい、載せていません。意図的に

なぜなら、今の広報担当者に足りないのは「きれいに撮る技術」ではなく、「何のために、誰に向けて、どんな動画を作るべきか」を設計する力だからです。

制作会社は、あなたが「こういう動画を作りたい」と明確に伝えれば、驚くほど良い仕事をしてくれます。逆に、曖昧な依頼には曖昧な成果物しか返ってきません。それは制作会社が悪いんじゃなくて、発注側の戦略設計力が足りていないだけなんです。

この本では、序章で「なぜ多くの企業動画は失敗するのか」という本質的な問いからスタートします。そして第1部では、動画広報の本質、目的と経営課題の接続、ターゲット設計、メッセージとコンセプト設計、媒体設計と資産視点、未来逆算ワークという6つの章を通じて、戦略の土台を徹底的に固めます。

ここがしっかりしていないと、どんなに美しい動画を作っても、会社の未来には何も残りません。

「短期の成果」より「長期の資産」を設計する視点

第2部では、表現方法の選定、ストーリー設計、構成案と絵コンテ、生成AI活用、半年ロードマップ設計、効果測定と改善、そして動画制作体制の進化設計という、より実践的な内容に踏み込んでいきます。

ここで大切にしているのは、「今回の動画をどうするか」ではなく、「半年後、1年後の会社の姿から逆算して、今どんな動画を作るべきか」という視点です。

たとえば、採用動画を1本作るとします。多くの企業は「今年の新卒採用に間に合わせよう」と考えます。でも、本当に戦略的に考えるなら、その動画は3年後も使える資産になっているでしょうか。社員が入れ替わっても、会社の本質的な魅力を伝え続けられる設計になっているでしょうか。

本書の第5章「媒体設計と資産視点」では、動画を「消費財」ではなく「資産」として捉える考え方を詳しく解説しています。この視点があるかないかで、動画制作の投資対効果は劇的に変わります。

制作会社を「使いこなす」ための実践ガイド

「制作会社に任せておけば大丈夫」

この考え方が、実は一番危険です。

制作会社は映像のプロですが、あなたの会社のビジネスや経営課題のプロではありません。彼らは「良い映像」を作ることはできても、「あなたの会社の未来につながる映像」を勝手に考えてくれるわけではないんです。

だからこそ、広報担当者には戦略設計力が必要なんです。

第2章「目的と経営課題の接続」では、社長の「なんとなく動画作ろう」という曖昧な指示を、具体的な経営課題と結びつける方法を解説しています。第3章「ターゲット設計」では、「若い人向け」みたいなふわっとしたターゲット設定から脱却し、ペルソナを明確に描く手法をお伝えしています。

そして第4章「メッセージとコンセプト設計」では、制作会社に「こういう動画を作ってほしい」と明確に伝えられる言語化力を磨きます。

これらができるようになると、制作会社とのやり取りが劇的に変わります。彼らは「この広報担当者は分かってる」と認識して、本気の提案を持ってきてくれるようになるんです。

生成AIと内製化──動画制作の未来を見据えて

本書では、第10章で生成AI活用についても触れています。

「AIで動画が作れる時代に、わざわざ戦略なんて学ぶ必要あるの?」

むしろ逆です。AIが普及すればするほど、戦略設計力の価値は上がります

AIは指示された通りに動画を生成してくれますが、「何を作るべきか」は教えてくれません。むしろ、曖昧な指示を出すと、曖昧な成果物が大量に生まれるだけです。AIを使いこなすためにこそ、本書で解説している「目的」「ターゲット」「メッセージ」「コンセプト」といった戦略設計の土台が必要なんです。

そして第13章「動画制作体制の進化設計」では、外部の制作会社に依存する状態から、段階的に内製化へと移行していくロードマップを示しています。いきなり全部を内製化する必要はありません。でも、戦略部分は社内で持つべきです。そうしないと、いつまでも「依頼係」から抜け出せません。

コラムで学ぶ、現場のリアルな知見

本書には3つのコラムも収録しています。

「高い機材を買えば、映像のクオリティは自動的に上がる…わけではない話」では、機材信仰の罠について語っています。初心者の方は特に、「いいカメラを買えばいい映像が撮れる」と思いがちですが、実際にはそうじゃないんですよね。

「ショート動画の構成、実は『守破離』や『起承転結』だけじゃ足りないかもしれない話」では、TikTokやYouTube Shortsといった短尺動画の構成を考える際の、意外な落とし穴について解説しています。

そして「機材を雑に扱う人に、良い映像は撮れない理由」では、技術論ではなく、クリエイターとしての姿勢や哲学について触れています。これ、実は動画戦略を設計する上でも、すごく大切な視点なんです。

「仕事の視座」が変わる一冊

この本を読み終えたとき、あなたの仕事の見え方は確実に変わっています。

「また動画作らなきゃ」というタスクが、「この動画で、会社の3年後をどう設計しよう」という戦略思考に変わります。制作会社との打ち合わせが、「お願いします」から「一緒に作りましょう」という対等なパートナーシップに変わります。上司への報告が、「動画をアップしました」から「この動画によって、こういう成果が期待できます」という提案型に変わります。

動画は、きれいに作るためのものではありません。

会社の信頼を設計し、未来を形づくるための戦略ツールです。

あなたがもし「動画を作ったけれど、思ったような反応がない」「制作会社に依頼しても、なんとなく期待と違う」「社内から動画制作を頼まれるけれど、何から始めればいいかわからない」といった悩みを抱えているなら、それは決してあなたの能力不足ではありません。ただ、誰も「動画戦略の設計方法」を教えてくれなかっただけです。

この本は、まえがきから序章、第1部の戦略の土台、第2部の表現設計と実践、そしてあとがきまで、合計13章とコラムで構成されています。読み進めるごとに、あなたの中に「戦略設計者」としての視点が育っていくはずです。

広報の仕事を、会社の未来をつくる仕事へ

わたしがこの本に込めたのは、「広報担当者はもっと評価されるべきだ」という思いです。

動画制作の依頼係として扱われるのではなく、会社の未来を設計する戦略家として認識されるべきです。そのためには、技術よりも先に、戦略設計力を身につける必要があります。

本書『会社の未来をつくる動画戦略〜広報担当者が制作依頼係から戦略設計者へ進化する実践ガイド〜』は、まさにその第一歩を踏み出すための実践的なガイドです。

動画を「広報の仕事」から「会社の未来をつくる仕事」へ。

この本を手に取ったあなたの仕事が、明日から少しずつ変わっていくことを、わたしは心から願っています。

会社の未来をつくる動画戦略: 広報担当者が制作依頼係から戦略設計者へ進化する実践ガイド
PAGE TOP